第29回「健康と経営を考える会」定例会開催レポート

お知らせ 2023年02月06日 配信

「健康と経営を考える会」第29回定例会(会員のみ参加)を、会場(Inspired. Lab 大手町)× オンラインで1月11日(水)に開催いたしました。

第三期データヘルスの動向

< 厚生労働省 保険局 原田保険課長 講演内容 >

厚生労働省保険局原田保険課長 からは、保険課がwith/afterコロナ時代に進めていく「第3期データヘルス計画の動向」についてご講演いただきました。

1. データヘルス計画の経緯と現状

■保険者データヘルスの背景
「健康日本21(2000年)」で、個人の健康実現には社会全体として健康づくり支援が不可欠として、国から地方自治体に通知があり、2008年には医療費抑制の面からも保険者別に目標値を設定、保険者インセンティブ制度とも連動した特定健診・特定保健指導を義務化した。2011年にはレセプト情報を効率的に解析・健康状況を正確に把握できるようレセプトの電子化を進めた。

■日本再興戦略(2013年)におけるデータヘルス計画の位置づけと指針の改正
同戦略における「国民の『健康寿命』の延伸」の中で、レセプトデータを分析し、それに基づき加入者の健康保持増進のための事業計画として「データヘルス計画」が位置づけられた。

2014年には、健康保険法に基づく保健事業の実施等に関する指針を改正し、データヘルス計画が盛り込まれた。

■2040年を展望した社会保障改革の新たな局面と課題
2025年以降、現役世代人口急減という課題の対応として、「高齢者をはじめとして多様な就労・社会参加の促進」と、データヘルスに基づいた取組みから「社会全体の活力を維持していく基盤として2040年までに3年以上健康寿命延伸」を行う。

■2040年を見据えた社会保障制度改革
「経済財政運営と改革の基本方針2021」により、予防・重症化予防に向けて、効果の高い評価指標の標準化や保健事業のパターン化等、データヘルス計画・手引きの改正を検討する。

■健保組合共通の評価指標
2021年度、「内臓脂肪症候群該当者割合」「特定健康診査実施率」「特定保健指導対象者割合」「特定保健指導実施率」「特定保健指導による特定保健指導対象者の減少率」5項目を共通指標として導入した。

2022年度から既存のものと併せ、23の共通指標を3期データヘルス計画に盛り込むよう進めている。

2. データヘルス計画に基づく効率的・効果的な保健事業の実施に向けたこれまでの施策

■コラボヘルス推進
健保加入者の健康状態や予防・健康づくり取組状況を、全国平均や業態平均と比較、見える化した「健康スコアリングレポート」をツールとし、コラボヘルスの最初のステップとすることを進めている。

■保険者インセンティブ制度
後期高齢者支援金加算・減算制度を、第3期データヘルス計画にあわせ、加算の範囲を単一健保では健診受診率70%未満、減算基準としてがん・精密検査受診率などを成果指標とするなど見直しを進めている。

■事業アプローチ
中小規模保険者の保健事業強化や効率化推進のため、複数保険者や民間ヘルスケア事業者が連携して行う共同保健事業の運営費を補助している。

成果連動型民間委託契約方式(Pay For Success)による保健事業への補助事業も実施している。これは、健康課題に対応した成果指標を設定し、民間事業者に支払う額は成果と連動して決めている。

3. データヘルス計画の現状課題と今後の論点

■計画策定・公表
優先順位の高い施策への重点化、健保職員のマンパワーとノウハウ、データヘルス計画公表状況低調が課題として認識されている。対応策としてデータヘルス計画・手引きに財政やエビデンスを勘案したうえで施策の優先順位をつけることを記載、データヘルス計画策定のための研修実施、公表範囲を健保間のみとすることを検討している。

■事業メニュー
保健事業メニューの優先順位づけに資する情報が不足している。そのため、先進的健保取組みを踏まえた事業メニューを指針に提示、好事例を手引きに記載する。保健事業分類をデータヘルス・ポータルサイトに実装する。大規模実証事業の成果に基づき、指針の中で、事業の推奨度を提示する。

■事業アプローチ
共同事業は幹事健保の負担が重いことから、民間委託事業者が負担できるよう研修実施を検討する。

■事業実施方法
効果のある保健事業、その先進事例の横展開が必要であることから、データヘルス計画・作成の手引きに、事業の効果を高める実施体制について掲載するよう考えている。

■評価指標
共通評価指標の更なる充実が課題で、データヘルス計画・手引きに掲載する。

ヘルスケア政策の推進

< 経済産業省商務情報政策局ヘルスケア産業課 橋本課長 講演内容 >

経済産業省商務情報政策局ヘルスケア産業課からは、ヘルスケア産業課がwith/afterコロナ時代に進めていく「ヘルスケア政策の推進」についてご講演いただきました。

1. 健康経営の推進

2021年度、日経平均株価を構成する225社の72%が健康経営優良法人認定を受けたが、従業員数にすると770万人、日本の被雇用者の13%に過ぎず、対象範囲を更に拡大していきたいと考えている。

2022年度、健康経営度調査の主なポイントは、以下のものとなる。

  1. 情報開示促進
  2. 業務パフォーマンス評価・分析
  3. データ利活用促進
  1. 情報開示促進としては、フィードバックシートで、1)経営層の健康経営への関与を示す項目、2)施策の社内への浸透を示す項目を追加した。開示には大規模法人の9割以上が前向きな回答をした。
  2. 業務パフォーマンス評価・分析として、アブセンティーイズム、プレゼンティーイズム、ワークエンゲイジメントを把握する法人数増加、複数年度の測定結果や測定方法を公開する法人も一定数あった(約500社)。健康経営強化の点で、これら業務パフォーマンスの取扱いについて検討、業務パフォーマンスと健康経営取組みの関係性を今後調査する。
  3. データ利活用促進の点で、40歳未満の従業員データを保険者に提供しているのは大規模法人で7割、中小規模法人で2割となり、「健診情報等を電子記録として活用」については、大規模法人5割、中小規模法人14%で、取組みに差が見られた。
    健康経営の可視化と質の向上として、特に業務パフォーマンスについて、アカデミアや健康支援サービス業者等と連携して分析を実施する。

国際的な情報発信として、5th Well Aging Society Summit (WASS) Asia-Japan開催、OECDによる調査プロジェクト公表を行った。WASSにて、稲垣・第一生命ホールディングス㈱代表取締役社長から「健康経営銘柄を重要なESG要素として組み込んでいる」、小木曽・㈱SDGsインパクトジャパン代表取締役Co-CEOからは、「企業価値と関連する項目として、健康が今後注目される指標となるだろう」とのコメントがあった。

顕彰制度運営事務局の自立化として、日本経済新聞社に運営を委託し、ポータルサイトACTION!健康経営では、5日間連続ウェビナー・健康経営WEEK2022開催等行った。

2. PHRを活用した新たなサービス創出

2021年、総務・厚労・経産の3省で、PHR事業者の遵守すべきルールの指針を策定した。

2022年10月には、医療DX推進本部を設置し、「医療DXにより実現される社会」として、生涯にわたって保健医療データが一元的に把握可能となること、切れ目なく質の高い医療受療が可能となること、デジタル化による医療現場における業務効率化、保健医療データの二次利用による創薬、治験などの医薬業者やヘルスケア産業の振興を目指す。

医療DX推進に向け、経産省は以下取組みを行う。

  1.  国民が価値を感じられる新たなサービス創出
    1)日常生活での活用(飲食、フィットネス事業等)
    2)医療機関で活用推進し、新たなサービス創出
  2. データ標準化・適切な情報の取り扱いなどの事業環境整備
    1)ライフログデータの標準化
    2)情報セキュリティルール整備
    3)業種横断的なPHR事業者団体設立
  3. 安全安心なサービス提供に向けたエビデンス整備
    関連医学会と連携してヘルスケアサービス提供に関して必要なエビデンスの整理や、それに基づく指針等作成

3. ヘルスケアサービスの信頼性確保

  1. 事業者団体による適切なサービス提供に向けたガイドライン策定、②学会による医学的エビデンスを整理して指針策定(AMEDで実施)、両面から取り組む。

4. ヘルスケアサービスの国際展開

日本の医療機器・サービス産業への波及効果が高い、以下、海外展開事業を支援する。

  1. 人材育成とパッケージ化した医療機関サービスの海外展開
  2. 学会ガイドライン・保険収載による現地での標準的な診療方法確立支援
  3. 日本の医療の強みと課題を提示しつつ各国が協力し合う医療の国際アライアンスを構築することで、各国の医療発展寄与、日本医療市場拡大を目指すMExx構想推進

花王グループ「健康の日」取組みのご紹介

< 花王株式会社 関根マネージャー 講演内容 >

花王株式会社人材開発部門健康開発推進部 関根マネージャーからは、花王グループ「健康の日」取組みのご紹介をいただきました。

2022年に花王グループ健康宣言では、以下の点を改定した。

  1. 『Well-being 一人ひとりのより良い状態へ』を掲げる。
  2. 宣言対象を社員・家族だけでなく、地域・職域、生活者の皆さまに拡大。

WHO世界保健デーに合わせ、4月7日を「花王グループ健康の日」として、2022年からキャンペーンを実施してきた。2022年には、社内取組みを重点的に行い、健康宣言を社員に募集、1,324名が宣言した。社外にはフェイスブックやツイッターで取組みを公表している。

2023年は、①自身の健康への意識を高め、健康行動を広げるきっかけとする、②社員とその家族に向けた健康増進を積極的に支援する、③世界の人々の暮らしと健康を支えていくことをメッセージとして発信する。2023年活動予定として、①健康宣言、②Waku Waku Walk!チャレンジ、③対話の場「健康について語ろう」を考えている。花王だけでなく「健康の日」の認知を高め日本全体に拡げたく、活動に賛同いただく企業に「花王グループ健康の日」・4月7日頃に健康の取組みを行っていただき、その事例を共有・連携することを考えている。また、7月頃に「健康の日コンソーシアム会議(仮)」を実施し、各団体取組み発表・意見交換を行うよう考えている。


健康経営・データヘルスに熱心に取り組む会員団体の方、会場28名×オンライン33名にご参加いただき、盛況のうちに閉会となりました。