第26回「健康と経営を考える会」定例会開催レポート

お知らせ 2021年12月21日 配信

健康と経営を考える会」の第26回定例会(会員のみ参加)を、会場×オンラインで12月7日(火)に開催いたしました。

最初に産業医科大学産業保健経営学教授で健康投資WG座長でもある森晃爾先生より『健康経営 成果を上げるために必要なこと、そして本当の成果とは?』というテーマでご講演いただきました。

森教授 講演内容

産業医科大学 森教授

『健康経営の成果に必要な組織要因』として、トップのコミットメントや経営層・管理職によるリーダーシップが重要で、特に喫煙率低下・健康教育参加率向上など、ポピュレーションアプローチに大きく寄与することを示されました。

次に『健康経営で蓄積される無形資源』として、「上司や同僚との関係性」「知覚された組織的支援(Perceived Organizational Support (POS))が高まることをお示しいただきました。POSが高い組織は、ワクチン接種など健康行動が増えること、管理職のPOSが高まると部下のPOSも増える「POSの連鎖」があることから、管理職の健康意識向上・健康教育の必要性についてもお話いただきました。

森教授 ディスカッション

ディスカッションの中では、「健康経営成功のためには、社員向けにはウェルビーイング向上、経営者向けには生産性向上と、キーワードを上手に使い分けることが重要な要素」「健康経営推進における保険者の役割は、医療費分析や家族へのアプローチといった事業主では手の届かないところを担うことで、今後は超高齢化社会の中、家族を含めたウェルビーイング推進が重要」「POS向上には公正性・上司のサポート・労働条件が重要で、公正性については人事・総務が主導するよう巻き込んでいくことが大切」等のコメントがありました。

次に、臨床精神医学と自殺予防学をご専門にされている一般社団法人日本自殺予防学会理事長・日本自殺予防センター長の張賢徳先生より『コロナ禍と鬱』をテーマにご講演いただきました。

張理事長 講演

一般社団法人日本自殺予防学会 張理事長

うつ病は、1990年代においては40-60代・男性が多かったが、2000年代Beforeコロナから若者・軽症の患者が激増してきた。withコロナ期には、若者、特に女性が多く、宿泊業・飲食サービス業の方、非正規雇用の患者が増えてきた。こうした経済的要因のほか、リモートワーク等によるコロナ関連ストレスも、うつ病の原因となっている。うつ病は早期発見が大切で、不眠や食欲不振など自律神経失調症が一ヶ月続くようであれば受診がのぞましい。うつ病患者の受診行動として、最初に精神科・心療内科を受診する人は10%未満で、65%の人が内科受診、次いで婦人科を受診することから、精神科以外で、うつ症状を早期発見してもらうことが重要となる。うつ病患者の内、受診する人は20%・70万人ほどで、230万人ほどは未受診のままということが問題となっている。うつや不安は、正常心理の中にあるものなので、疲れていても仕方がない等、未受診のままとなるケースが多い。

メンタルヘルス維持に大切なことは、「サポートを求める」「仲間づくり」「余力ある時の人助け」とお話いただいた。

張理事長 ディスカッション

ディスカッションでは、会社側ができる、うつ病予防対策について質問があり、張先生より「社内コミュニティづくり、身体活動イベントなどにインセンティブをつけるなど仕組みをつくること」とのご回答をいただいた。


健康経営に熱心に取り組む会員団体の方、会場16名×オンライン42名にご参加いただき、盛況のうちに閉会となりました。